今日は大会前のリハーサルをこのホールで行うことになっていた。リハーサルは各学校1回だけ。
それも1時間から2時間ほどしか貸して貰えないからこの時間がどれほど大切かいつも思い知らされる。
「二階堂さん、ちょっと確認いいかしら」
「はい!」
バタバタと準備をしていると先生に呼ばれ、前に出る。リハーサルの確認と本番同様のセットになっているかのチェックだった。
部員はそれぞれ忙しそうに走り回っていた。先生とのチェックが終わり、私はそっとホールを見渡す。
……出雲くんは来てない、か……。
出雲くんと話し合いをした日に今日のことを紙で伝えたつもりだった。私たちの音楽を一度でもいいから聞いて欲しかった。
それだけだった。
でも、やっぱり無理だったかな……。
「……はぁ。……ん?ねぇ、早穂ちゃん。ホルンパートの椅子1個多くない?」
ホールを見ながら自分の持ち場に戻る。ため息をつきながら椅子を見るとパートの人数よりも1個多かった。
私たちホルンパートは3人なのに椅子は4つ。不思議に思った私は近くにいた早穂ちゃんに声をかけた。
「ああ、なんか先生に言われました。1個プラスで置いて欲しいって」