出雲くんが離れてしまって、寂しく感じた。ポケットからスマホを取りだし、画面を開く。
そこには予想通り、華奈からの着信だった。
「もしもし」
『琴乃?話し合いは終わった?そろそろ合奏するから戻ってこいって先生言ってるよー』
応答のボタンをタップすると向こうの騒がしい音共に華奈が話す。時計を見て時間がだいぶすぎていたことを知った。
少し話をするだけだったのにこんなにも時間がたっていたとは。
「わかった。ありがとう。もうそっち行くから」
『了解。待ってるからね』
華奈に返事をしてから電話を切る。今日のタイムミリットが来てしまった。時間はあっという間に溶けていく。
「練習戻れよ。お前を待ってる仲間がいるんだろ?」
スマホの画面を切った後、出雲くんがそう言った。悲しそうな言葉に聞こえたけど、言葉に反して出雲くんの表情は晴れやかだった。
「……うん。じゃあ、戻るね」
本当はもう少し話したかったけど……。結局話を聞くだけで出雲くんの欲を引き出せなかった。
私は椅子から立ち上がりドアに向かって歩こうとするけど、立ち止まって回れ右をする。
「出雲くん。この紙に書かれた日、大会のリハーサルするから。良かったら来てね」