いくら理由を知らなかったとはいえ、無理に何度も勧誘してしまった。出雲くんとまた音楽を奏でたいと思った自分のわがままのせいで。
今にも消えてしまいそうな出雲くんを抱きしめて。何を思ったのか分からない。出雲くんは戸惑いながらもそっと私の背中に手を伸ばす。
ーートクン。
暖かな温もりが体全体を包み込む。もっと早くこうしてれば良かったかな。変な自分の考えを持たないで、こうしてただ真っ直ぐと向き合えば良かったのに。
忙しさを理由にして、出雲くんの反抗的な態度を理由にして。向き合ってこなかった。華奈もきっと話せばわかるはずなのに。
お互いに、避けていた。
「ありがとう。……琴乃」
「……っ、ううん」
抱きしめあって数秒後。出雲くんがポツリと私の名前を呼んだ。その瞬間、また心臓が甘く跳ね上がる。
私も名前を呼ぼうと口を開いた。
……だけど。
ーーブー、ブー……。
「ご、ごめん。多分、華奈だ」
タイミングいいのか悪いのか分からないところで、制服のポケットに入れていたスマホが震えた。
「悪い。……出ろよ。僕はいいから」
「ごめん」
そう言いながらそっと出雲くんが離れていく。