この前の外部講師の先生が言ったこととほとんど同じだった。出雲くんの転校理由はやっぱり、音楽ができないと思い込んで、責任を感じて吹奏楽部をやめたこと。
耳が聞こえなくても、いくらでも音楽を楽しむ方法はあったはずなのに。ましてや出雲くんの場合はまだ片方の耳は聞こえるのだ。
微かでも聞こえるなら、希望を持っても良かった。なにも知らない無責任な私が言えたことじゃないけど少なくともそう思ってしまった。
「それでも、ホルンを吹いていたのはなんで?」
中庭で聞いた出雲くんの楽しそうな音楽。確かによくよく聞いてみると前と音は違う。
1度自分の音を見失って、苦労してまた取り戻した。そんな音楽を出雲くんは吹いていた。
あの日、あの時の音楽は忘れられなかった。
「……まだ、ホルンを手放せなかった。音楽を捨てきれなかった」
私の真っ直ぐな問に息を吐き出すように話した言葉。私も、何度も同じことを思った。出雲くんも同じようなことを思っていて少しほっとしてしまった。
それと同時に、無意識に腕が伸びて出雲くんを……優しく抱きしめていた。
「……二階堂?」
「辛かったね。ごめんね、気づかないで無理に勧誘して」