出雲くんに病気を打ち明けられてからたくさん調べた。突発性難聴。まだまだ分からないことだらけだけど、出雲くんはこの病気と向き合ってきたのだ。



「……ねぇ。今の出雲くんの欲は?音楽はもうやりたくないの?勉強は大事だと思うけど、まだまだ音楽はやりたいないんじゃないの?」



お互い必死に涙を堪えながら向き合う。私はそっと深呼吸してからそう聞いた。勉強をすることは大事。


私も大学進学に向けて頑張っているところ。出雲くんは保健室登校でただがむしゃらに勉強していた。


ここに来るといつも机と向き合っていて、何か勉強している。それは決して悪いことじゃないと思うけど、私には……自分の気を紛らわしているようにしか見えなかった。



「……どうだろうな。去年から分からなくなった。自分はどうしたいのか。こんな体でも音楽やっていいのか分からなくて」



今までなら音楽のことは話さなかったのに吐き出すように自分の気持ちを話してくれた。


ちょっと前までなら考えられない出来事。


私はまっすぐと出雲くんと向き合った。



「自分の耳はもうほとんど聞こえなくて。ホルンはしまいこもうとして、この学校に転校してきた。前の学校は吹奏楽部の推薦で行ったから、もういられなかった」