ほかの部員は知らない。


みんな用事だとか言って、必ず誰かは休む。休日に部員全員が揃うことはあまりない。


ー〜♪♪〜♪……。


「ねぇ。なんかホルンの音、聞こえない?」


「え?」



華奈と話しながら中庭に出ると、微かだが、ホルンの音色が聞こえてきた。


ここだと人気がなくてサボるのには打って付けな場所だと思って来たのに。


まさか、私のパートの中にここで練習してる人いるの?



「……本当だ。めちゃくちゃ綺麗……」


「誰が吹いてるんだろ……」


「琴乃のパートの誰かじゃないの?確か真面目に練習してる子、一人いたよね?ほら、1年生の」


「早穂(さほ)ちゃんのこと?」



私のパートは各学年1人ずつ、計3人いる。部員は少数なので、決して多い方では無い。大会もギリギリ出れる人数で部活は回っていた。


早穂ちゃんは私の後輩の1人。


私のパートの中でも真面目に練習して、真剣に大会に挑んでいる子。


でも……。



「そうそう」


「いや、違う。音のだし方が早穂ちゃんじゃない。早穂ちゃんはもっとこう……元気よく音を出すタイプだから」