ほかの部員は知らない。
みんな用事だとか言って、必ず誰かは休む。休日に部員全員が揃うことはあまりない。
中庭に続く廊下を歩いていた頃。ふと窓の外を見ると、どこからか優しい楽器の音色が聞こえてきた。
ー〜♪♪〜♪……。
「ねぇ。なんかホルンの音、聞こえない?」
「え?」
一度立ち止まり、華奈を引き止める。耳を澄ますとかすかにホルンの音が聞こえた。
ここだと人気がなくてサボるのには打って付けな場所だと思って来たのに。
私のパートの中にここで練習してる人いるのかな?
「……本当だ。めちゃくちゃ綺麗……」
「誰が吹いてるんだろ……」
「琴乃のパートの誰かじゃないの?確か真面目に練習してる子、一人いたよね?ほら、1年生の」
「早穂(さほ)ちゃんのこと?」
私のパートは各学年1人ずつ、計3人いる。部員は少数なので、決して多い方では無い。大会もギリギリ出れる人数で部活は回っていた。
早穂ちゃんは私の後輩の1人。
私のパートの中でも真面目に練習して、真剣に大会に挑んでいる子。他の子はみんなやる気がないのに早穂ちゃんだけは熱心に練習していた。
でも……。
「そうそう」
「いや、違う。音のだし方が早穂ちゃんじゃない。早穂ちゃんはもっとこう……元気よく音を出すタイプだから」