大会への、私たちの青春はカウントダウンが始まっていた。もう高校三年生の6月中旬で、楽しい時間も残りわずか。
大会に至ってはあと2週間もない。
私たちの輝く青春の1ページにふさわしいと思えるように、毎日を過ごしたい。君と過ごす最後の夏は……最高の夏にしたい。
「……なんで、だよ。なんでそんなに僕と向き合えるんだよ。二階堂のことを避けて、九龍にも酷い態度取って。1人で良かった。良かった、のに……なんで、お前はっ……」
私が出雲くんと目をそらそうとしないからか次々と言葉が溢れる。私はその一言一言に頷いた。
今まで苦しくても誰にも相談出来なかったのだろう。出雲くんの性格からして、自分で抱え込んでいたんだろう。
部活のことも、自分のことも。
「出雲くんは最高の仲間だから。絶対に1人にはさせない。病気のことも音楽への思いも全部受け止める。最初は私も受け入れられなかったけど……今なら向き合えるから」
耳が聞こえないってどれほど辛いことだろう。音楽が楽しくて、ひたすらに向き合っていたのに。
……突然、自分の世界から半分音が無くなるなんて。考えただけでもゾッとした。