なのに、神様は意地悪で残酷だった。
「……二階堂?なんでここに?」
「出雲くん。突然ごめんね」
はぁ、と溢れそうになる涙を押さえ込もうとため息を着いた。その時、私の声で気づいたのか、雰囲気で気づいたのか分からないけど出雲くんは後ろを見た。
久しぶりに私の名前……苗字を読んでくれてトクン、と心臓が甘く響いた。
出雲くんが名前を呼んでくれた。それだけでも私は嬉しく思えた。
「なんだ。勧誘ならもう聞かないぞ。先生のも断ってるからな」
私を見るなりそう言い放つ出雲くん。その言い方はキツイのにどこか寂しげで。心の奥では本気で思っていない。
そんなふうに捉えられる言い方だった。
「……今日は勧誘じゃないよ。ちょっと出雲くんと話をしたかっただけ。部活もあるから少ししか時間取れないけど……隣、いいかな?」
私はもう無理に出雲くんを勧誘しないって決めた。出雲くんには出雲くんなりの気持ちはあるし、一緒に音楽をやりたいというのは私のわがまま。
必ずしも願いが叶うとは思わない。
だから、自分の話をしに来ただけ。本当に……それだけ。
「……勝手にしろ」
「ありがとう」