私は先生にお礼を言って恐る恐る保健室のドアを開けた。先生は用事があるのかどこかへ行ってしまった。
ドキドキしながら保健室の中へ一歩足を踏み入れる。なんだかこの前もこんなことあったような気がする。
確か出雲くんが転校してからすぐの出来事だったよね。あれから約2ヶ月経ったなんて信じられない。
時の流れの速さに驚くばかりだ。
あの日、出雲くんと出会っていなければ。今の私はいなかった。そう思うほど出雲くんの存在は私の中で大きかった。
「……出雲くん、いますか?」
出雲くんの背中が見えた時。
その場で立ち止まって名前を呼んでみる。この距離では聞こえないかもしれない。わかっていたけど、私は何故かこの位置で名前を呼んだ。
……聞こえない、か……。
当然のように私の声は聞こえていなかった。私の存在に気づいていない様子でひたすらにテーブルと向き合う出雲くん。
その背中がなんだか小さく見えてしまった。
「……出雲くん」
すっかり変わり果てたその反応に、やっぱり私はまだ受け入れられなくて。また名前を呼んだ。
昔はどんなに小さな声で名前を呼んでも聞こえて、反応してくれた。