ある日の放課後。
私は保健室の前を行ったり来たりしていた。ここは校舎の中でも端っこにある方だからあまり生徒は寄ってこない。
遠くで声が聞こえる程度で、周りには誰もいなかった。
静まり返った廊下に響くのは私の足音と息遣いだけ。ここまで来たはいいけどどうしよう、とずっと悩んでいたのだ。
「あら?具合悪いのかしら?」
「ひぇっ!ち、違います!」
保健室の前でオロオロしていたらいきなりドアが開いて先生に話しかけられる。中には出雲くんしかいないと思っていたから、ちょっとびっくり。
反射で答えてしまった。
「……?そうなの?じゃあ、早く帰るか部活に行きなさいね」
「あ、えっと……い、出雲くんに用事があって……」
具合が悪くない生徒を見て怪訝そうに見る先生。まぁ、そうなるよね。なにも用事がないのに保健室の前にいるのは迷惑でしかない。
誤解されたくなかった私は咄嗟に用事を包み隠さず先生に話してしまった。
出来れば誰にも会わずに出雲くんと話をしたかったけど……。先生がいればそれは無理か。
「そう?出雲さん、中で勉強してるわ。あまり邪魔しないようにね」
「ありがとうございます!」
用事を伝えたら納得してくれた。