ねー、と話しながらサックスを愛でる華奈。その姿を見て、心の中で思いっきり同意した。
華奈の言う通りだ。
私たちが全国大会を目指したところでどうにもならないことは明確。
だったら変に気負わないで部活を楽しんだ方がいい。それが、ウチの学校の吹奏楽部のモットーであり、みんなが思っていることだった。
「あ、そうだ。今週の土曜って練習日だっけ?」
「うん。そうだけど」
華奈が突然顔を上げる。
「ごめん。その日私部活休む〜。彼氏とデートなの♡」
「あー、わかった。先生には自分から言っときなよ?上手くやりくりしとくから」
「ありがとう、琴乃!」
華奈の言葉に思わず拍子抜けしてしまう。
彼氏とデート……か。
華奈が部活を休むのは珍しくない。他校にいる彼氏とのデートを優先して、ちょくちょく休む。
まぁ、部員が一人抜けても問題ない。
ただ、私が休むと面倒なことになりがちなので一応休日の部活はちゃんと参加している。