部屋に取り残された私は自分のスマホを取り出しイヤホンを見つけると耳に差し込む。そして出雲くんの音源をネットで探し出して聞いた。


いつもの聞きなれた音楽とおそらく聴力を失ったあとの音楽。両方を聴きながら私は静かに涙を流した。


出雲くんの音楽が心に染みて、なんだか無性に涙が溢れた。学校で出雲くんのホルンを聞いた時はそこまで酷くなかった音楽。


だけど去年の音源を聞いて相当努力したんだなと思ってしまった。音楽が好きで好きで仕方ない。


そんなふうに捉えられる出雲くんの音楽は。いつ聞いても感動するものだった。


***


地獄の合宿2日目。


私は部屋のカーテンを開け、朝日をめいいっぱい浴びた。部屋には大きな窓があり日差しがたっぷりと入り込む。



「おはようございます。今日も天気いいですね」


「おはよう。早穂ちゃん」



思いっきり背伸びをしていたら早穂ちゃんが起きてきた。眠そうに目を擦りながら私の隣に並ぶ。


ふわぁ、と大きなあくびをしながら日差しを浴びていた。



「今日は確か外部講師の先生来ますよね?」


「そう。昨日は全体だったけど今日はパートごと。ホルンはお昼前に来るからよろしくね」