「勝手に音楽止めてすみません。でも、これを聞いてください。これは去年の大会の課題曲です。ホルンパートのやつで出雲先輩の音源のみのやつです」



音楽を止めたあと早穂ちゃんの言葉を聞いてまた耳を澄ます。出雲くんの姿がスマホ内に映し出され、ホルンの音が聞こえた。


だけど……先程とは音が少し違っていた。


さっきの音は軽やかで歌うように滑らかな音で奏でていた。でも、今回のは少し違う。音のピッチが上手く合わず、音が揺れていたり割れていたりしていた。


とにかく、出雲くんの音楽じゃない。


それだけは、わかった。だけどスマホから流れる音楽は紛れもなく出雲くんのもの。


頭の中は混乱するばかり。


……なんで、こんな出雲くんらしくない音が出ているの……?



「おかしいですよね。出雲先輩の音楽なのにそうじゃないみたいで。まるで自分の音が聞こえていないみたいじゃないです?」



早穂ちゃんの鋭い言葉にドクッと心臓が跳ね上がった。おそらくその理由を知っているのはまだ私だけ。


早穂ちゃんは自分で音楽を聞いて出雲くんのおかしいところに気づいたのだ。


さすがとしか言いようがない。