だけど私はその音源を探さないで一度も聞いていないのだ。聞いたのは学校で吹いていた音楽のみ。
あとは中学の頃の記憶の音楽だ。
「……少し聞いてもいいかな?」
「はい、どうぞ」
どんな音楽を奏でているのか気になった私は早穂ちゃんからイヤホンを受け取ると音源を流す。
すると、とても軽やかなホルンの音色が聞こえた。いつもの出雲くんの音。楽しくて仕方ない、そんな音楽が流れた。
「……出雲くんの、音だ」
「そうなんです。私はこの音に憧れてホルンを始めました。出雲先輩の音楽は凄いですよね」
「うん」
ほとんど無意識に言葉が出てきた。
出雲くんらしい音楽が流れてきて思わず胸の奥から熱いものが込み上げてくる。なんだか泣きそうになって、必死に涙を抑えた。
音楽を聞いてこんな気持ちになるのは久しぶりかもしれない。
「……でも、なんか少し変なんです」
「え?」
泣きそうになるのを必死で抑えていると早穂ちゃんがポツリとそんなことを言った。
私は聞き間違いかと思い、早穂ちゃんを見た。だけど、真剣な目でスマホをスクロールした後ある動画を再生させる。