その私の姿に気づいた早穂ちゃんは慌てた様子でイヤホンを取った。宿泊する部屋はパートごとで2〜3人に別れる。
この部屋には早穂ちゃんと私しかいなかった。もう一人の子は人数合わせで別の部屋に行ってしまった。
「全然大丈夫。なんか聞いてたの?」
「……まぁ、ちょっと……」
何を聞いていたのか気になって聞いてみたけどはぐらかされた。少し気まずそうに目をそらす早穂ちゃん。
私は首を傾げた。
「出雲先輩の音楽を聞いていたんです」
「……え?」
あまりにも早穂ちゃんから目をそらさない私に折れたのか早穂ちゃんが話してくれた。
だけどその言葉にドキッと心臓が跳ね上がる。
「出雲先輩の一年生の頃の大会の音源がネットで流れていたのを見つけて。そこからずっと過去のものを探して聞いていたんです」
「……そう、なの?」
早穂ちゃんが気まずそうにしていた理由はこれか。私が出雲くんと知り合いだから気まずいんだ。
なんかちょっと申し訳ない……。
でも出雲くんの音源がネットで流れているなんて初めて知った。まぁ、出雲くんの行った高校は割と有名で吹奏楽部は名門だからあってもおかしくは無い。