華奈になら理由を話しても良かったのかもしれないけど、私はそれを伏せた。自分もまだ受け入れられてないし、私から話すことじゃないと思ったから。


出雲くんの気持ちも考えないで勝手に勧誘して。これ以上、出雲くんを傷つける訳にはいかなかった。別に嘘を言ってる訳じゃないから、後ろめたさはなかった。



「そう。本人が言うなら、無理なのかもね」


「……うん」



華奈がそれ以上何かを聞くことはなかった。普通なら理由は?とか気になるところだけど。



「大会まであと1ヶ月かぁ。長かったようであっという間だったね」


「そうだね」



今は6月上旬。


あと1ヶ月もしないで地区大会が始まるのだ。青春全て掲げた吹奏楽部ももうすぐ終わろうとしている。


……まさか音楽にここまでのめり込むとは思わなかったなぁ。



「学生最後の夏の大会、頑張ろうね!」



華奈は何を思ったのか、ニカッと微笑むとそう言った。しんみりした雰囲気になってしまったけど華奈の言葉で少し気持ちが上がった。



「そうだね!最後の夏を楽しもう!まずは強化合宿だ!」



全力で駆け抜けた6年間。


最後の夏にふさわしいと思えるようなそんな音楽を奏でられるように頑張らなくちゃ。