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「ねぇ。出雲くんの勧誘はどうなったの?」



その日の部活の帰り道。


華奈に聞かれ、足を止めた。他愛もない話をしていたけど不意に華奈が真面目な表情になる。



「あー……断られた。やっぱり、ダメみたい」



一瞬息を呑んだけど素直に言葉を吐き出した。華奈には黙っていてもしょうがない。


実はあの日以来出雲くんとは会っていない。教室には相変わらず姿を見せないし、中庭にも行けていない。


まぁ、勧誘しようと思えばいくらでもできるけど。今、出雲くんと顔を合わせたら余計なことしか言わない気がして。


避けている、といった方が正しいのかな。



「ダメみたいって……ちゃんと話はしたの?」


「した。ちゃんと真正面からぶつかって、話をしたよ」



あの日、出雲くんに会っていなければちゃんと話出来なかったかもしれない。そう思うほどあの日の出来事は私の中では大きかった。


現実を知った事実も、大きかった。



「……それで?出雲くんはなんて?」



私の話す雰囲気から何かを読み取ったのだろう。華奈は遠慮がちに聞いてくる。



「前と変わらない。吹奏楽部入る気ないって」