何とか言葉を絞り出した私の声は震えていた。なんか分からないけど、わけのわからないものが胸の奥から込み上げてきて。
それを押さえ込もうと必死だった。
「……あれは、自分の記憶とかすかに聞こえる右耳の聴力で吹いてるだけ。だから新しい曲はもう吹けない。……わかってくれた?」
……信じられない。
だって、出雲くん今も普通に会話出来てるよね?
普通に生活して、私を満員電車から守ってくれて。普通に楽しそうに演奏だってしていた。
それなのに……こんな話、信じられるわけない。出雲くんは普通の人だよ。
「……」
「じゃあ僕はこれで。もう話すことはないから」
出雲くんは補聴器を耳につけるとお金をテーブルに置いてそのままカフェを出た。
……呆然と固まる私を置いて。
「……なんで、出雲くん……」
あんなに楽しそうに音楽していたのに。
自分から音楽を手放すなんて。悔しいやら情けないやらで無意識に涙が溢れて流れ落ちた。
突きつけられた現実を受け入れられなくて。打ち明けてくれた出雲くんはどんな気持ちなんだろう。
何も知らない私がズカズカ人の心に入り込んで吹奏楽部の勧誘をして。