私はため息をつきながらゆっくりと顔を上げる。



「……あります」



全国大会に行く気なんてサラサラない。だけどここで頷いとかなければさらに面倒がかかることはわかりきっていた。


私ももう高校三年生。


それくらい、気配りはできる。



「本気ならみんなをしっかりまとめてちょうだい!今日はもう合奏しません。各自譜読みからしっかりやり直してきて!」



私の言葉にため息とともにまたウザイ言葉が吐き出された。


はーい、というみんなのやる気のない返事とともに合奏はお開きになった。各自パート練習や自分で練習を進めることになった。


私は自分のホルンパートを1回集め、各自で好きな場所で練習して、と指示を出す。



本音を言えばもう帰りたい。


やらなければいけないこともあるし。さっさと部活も辞めたいと思っていた。


だけど吹奏楽のコンクールは予選が6月下旬から行われる。だから引退までほかの部活よりなかなか時間がかかるのだ。


私は後輩ふたりがどこかへ練習しに行くのを見送った後、ホルンを抱き抱え、音楽室を出る。


サボれる場所がないかとウロウロしていると、後ろから声をかけられた。



「こーとの!パート練習じゃないの?」


「華奈(かな)。今日は各自で練習。私のパートはみんなできてるからね」