“理由らしい理由”を聞かされても私は出雲くんの言葉に納得出来なかった。だって、それは本心じゃないと言うことが本人の顔を見てわかってしまったから。
「……それが、出雲くんの本心?」
黙り込んだ出雲くんに無意識に投げかけた言葉。私は、諦めきれなくて。どうしても、また出雲くんと音楽を奏でたくて。
藁にもすがる思いで顔を上げる。
「……僕、実は左耳が聞こえないんだ。右耳ももうほとんど聞こえなくて」
「……え?」
黙り込んだ出雲くんが次に話しに耳を疑った。まさかここでそんな大事なことを打ち明けられるとは思わなくて。
……ショック、を受けた。
「これ。補聴器だけど意味ないんだ。高校に入学してすぐ耳がおかしいことに気づいて。その時にはもう……遅かった」
出雲くんは耳から小さな機械を取り出すとテーブルにころん、と置く。ポツリポツリと話す出雲くんはどこか儚げで。
悲しい、という言葉ではいい表せないほど気持ちが落ちていた。
そんな出雲くんを見て私は何も言えなくて。ただただ補聴器を見つめた。
「……でも、出雲くん……学校で、ホルン吹いていた、よね?」