……気持ち悪い。


気持ち悪い。吐きそうだ。


静まり返った薄暗いホールの中で、みんなが息を潜める中。私は必死で呼吸をしていた。


緊張しすぎて気持ち悪くなるなんて、生まれて初めてで。頭の中はとても混乱していた。


息をしているのに酸素が上手く体の中に入っていかなくて、浅い呼吸しかできない。


ぎゅっと握った自分の手は汗でびちょびちょ。これほどまでに緊張した瞬間は……ない。



「琴乃。大丈夫」



緊張していたのが伝わっていたのか隣に座っていた出雲くんに手を握られる。


すると、不思議な事に呼吸は落ち着いて、上手く息をすることができた。


出雲くんの手は安心する。


そう思いながら私はステージの方を見あげた。


しばらくすると薄暗かったホールがさらに暗くなり、ステージの幕がゆっくりと左右に別れた。



「えー、皆様。本日の全日本吹奏楽コンクール地方大会、お疲れ様でした。それでは審査の方が終了いたしましたので結果を発表していきます」