♢壱弥君の訪問
我が家で話題になっている、私の彼氏候補の壱弥君が我が家にやってくる日がとうとうやってきた。チーム半妖のみんなも興味津々のようだ。まだまだ友達なのだが、エイトは父親面をして、腕組みをして威厳を保つ。若いし、華奢な体なのに、目つきが鋭いせいか威圧感がある。怖そうな人という感じがエイトからは発せられる。
「水瀬エイト先生ですか。僕は先生の大ファンなんですっ。握手してください」
壱弥君がまるでアイドルと遭遇したファンのようにかけよって握手をせがむ。その姿は腰が低く、頭を下げながら必死に手を出すので、なんだか意外な一面だった。もっとおとなしく控えめなイメージだったから。調子を狂わせた半妖は、少し目つきが穏やかになる。
「かまわねーけど、今日はあいさつに来たんだろ」
「はい。サインもお願いします」
色紙持参というところが用意周到だ。
「君、名前は?」
「初野壱弥です」
目を輝かせている壱弥君。エイトを見る視線が熱い。
「あのさ、今日はファンとしてきたのか? ナナの恋人候補として挨拶に来たのか? どっちだよ」
怪訝そうなエイト。上から睨みつける。
「どっちもです。ナナさんのこと、いいなぁと思っていたんですけれど。ある時、保護者がエイト先生だとお聞きして、運命だと思いました」
「運命って何が?」
「ナナさんを好きになったのは、先生に会えるための縁だったんだって」
「結局、ナナのことより俺のほうが好きなのか?」
あきれた顔のエイト。
「両方大好きです」
「しっかし、よくそういう台詞簡単に言えるな。ちゃんと好きじゃない男と交際は認めん、遊びだったらぶっ殺す」
まるで昔の頑固おやじのようなセリフだ。結構古風なタイプなのかもしれない。見た目はそう見えないけれど。
「せんせえはちゃんと考えているんだね、娘のこと」
冷やかすようにサイコさんが笑っていた。
「大事な娘さんに失礼のないようにお付き合いします」
「まだ付き合ってないって」
私はそこを否定する。
「そうだな、デートは家でデートするならばリビングか居酒屋限定な。ナナの部屋は禁止。俺だって入ったことないんだしな」
腕組みしたエイトは過保護なうざい保護者となっている。絶対迷惑なタイプな大人だ。こんな親だったら口を利きたくないと思うだろう。
「ええ?? ここでデートいいんですか? 僕、先生の家に来てもいいならばしょっちゅう来ます」
「でも、俺は仕事中は基本別人みたいに集中してるから、相手はできないけどな。仕事部屋に入るのも禁止な」
「禁止っすか?」
残念そうな壱弥君。
「私も禁止なの、アシスタントと編集の人しか入ることはできないから」
あまりにも残念そうな壱弥君をみると、私と会いたいのではなく、漫画家のエイト先生に会いたいというだけではないのか? そんな疑念が頭をかすめた。
そのあと、樹さんや鬼山さんもさりげなく、彼氏候補を見て見ぬふりをして、通りすがる。みんな好奇心旺盛だ。半妖って人間と変わらないんだなぁ。ここにいる人たちはみんな若いからなぁ。
サイコさんなんてニヤニヤしながら、壱弥君を上から下まで舐めるように見ているので、壱弥君は大人の色気にたじろいでいた。それを見て楽しむサイコさんはやっぱりからかうのが上手な女性だ。異性に接することになれているし、きっと喜ぶポイントなんかもわかるのだろう。私には永遠に達することができない境地かもしれない。
我が家で話題になっている、私の彼氏候補の壱弥君が我が家にやってくる日がとうとうやってきた。チーム半妖のみんなも興味津々のようだ。まだまだ友達なのだが、エイトは父親面をして、腕組みをして威厳を保つ。若いし、華奢な体なのに、目つきが鋭いせいか威圧感がある。怖そうな人という感じがエイトからは発せられる。
「水瀬エイト先生ですか。僕は先生の大ファンなんですっ。握手してください」
壱弥君がまるでアイドルと遭遇したファンのようにかけよって握手をせがむ。その姿は腰が低く、頭を下げながら必死に手を出すので、なんだか意外な一面だった。もっとおとなしく控えめなイメージだったから。調子を狂わせた半妖は、少し目つきが穏やかになる。
「かまわねーけど、今日はあいさつに来たんだろ」
「はい。サインもお願いします」
色紙持参というところが用意周到だ。
「君、名前は?」
「初野壱弥です」
目を輝かせている壱弥君。エイトを見る視線が熱い。
「あのさ、今日はファンとしてきたのか? ナナの恋人候補として挨拶に来たのか? どっちだよ」
怪訝そうなエイト。上から睨みつける。
「どっちもです。ナナさんのこと、いいなぁと思っていたんですけれど。ある時、保護者がエイト先生だとお聞きして、運命だと思いました」
「運命って何が?」
「ナナさんを好きになったのは、先生に会えるための縁だったんだって」
「結局、ナナのことより俺のほうが好きなのか?」
あきれた顔のエイト。
「両方大好きです」
「しっかし、よくそういう台詞簡単に言えるな。ちゃんと好きじゃない男と交際は認めん、遊びだったらぶっ殺す」
まるで昔の頑固おやじのようなセリフだ。結構古風なタイプなのかもしれない。見た目はそう見えないけれど。
「せんせえはちゃんと考えているんだね、娘のこと」
冷やかすようにサイコさんが笑っていた。
「大事な娘さんに失礼のないようにお付き合いします」
「まだ付き合ってないって」
私はそこを否定する。
「そうだな、デートは家でデートするならばリビングか居酒屋限定な。ナナの部屋は禁止。俺だって入ったことないんだしな」
腕組みしたエイトは過保護なうざい保護者となっている。絶対迷惑なタイプな大人だ。こんな親だったら口を利きたくないと思うだろう。
「ええ?? ここでデートいいんですか? 僕、先生の家に来てもいいならばしょっちゅう来ます」
「でも、俺は仕事中は基本別人みたいに集中してるから、相手はできないけどな。仕事部屋に入るのも禁止な」
「禁止っすか?」
残念そうな壱弥君。
「私も禁止なの、アシスタントと編集の人しか入ることはできないから」
あまりにも残念そうな壱弥君をみると、私と会いたいのではなく、漫画家のエイト先生に会いたいというだけではないのか? そんな疑念が頭をかすめた。
そのあと、樹さんや鬼山さんもさりげなく、彼氏候補を見て見ぬふりをして、通りすがる。みんな好奇心旺盛だ。半妖って人間と変わらないんだなぁ。ここにいる人たちはみんな若いからなぁ。
サイコさんなんてニヤニヤしながら、壱弥君を上から下まで舐めるように見ているので、壱弥君は大人の色気にたじろいでいた。それを見て楽しむサイコさんはやっぱりからかうのが上手な女性だ。異性に接することになれているし、きっと喜ぶポイントなんかもわかるのだろう。私には永遠に達することができない境地かもしれない。