目が覚めると、海へ出かけた。
「翔ちゃんー」
       .....
そう呼ぶと、君は現れた。
「瑞月、やっと逢えたー」
翔ちゃんは、幽霊になってしまった。
「翔ちゃん、私言いたいこと言えたよ」
「良かったね」
そういうと、立ち去ろうとした。
「待って!」
振り返って、翔ちゃんはこちらに歩み寄ってくれた。
「ごめんね、翔ちゃん…。今まで、君のこと忘れていた…」
「有紗」
有紗。その呼ばれ方がとても懐かしい。
そう、私の前世ー牧原有紗の恋人は"輪島翔"。目の前にいる彼だった。
「有紗だよ。牧原有紗。ごめんね…。先に死んじゃって…」
「有紗。君は、俺との約束を果たしてくれた。もう、思い残すことはない」
「ねぇ、翔ちゃん」
前世で呼んでいた翔ちゃん。
懐かしさの正体は、これだった。
「あーちゃんって前に1回呼んでくれたじゃん…?」
いつの間にか、声が震えていた。
「また、呼んで…?」
「あーちゃん。有紗。みーちゃん。瑞月」
胸がいっぱいになった。
君は20年後の夏、私に逢いに来てくれた。
それだけでも、お腹も胸もいっぱい。
「翔ちゃん」
「また、瑞月が…。いや、有紗がそう呼んでくれて嬉しかった。俺は、君が死んで庇った女の子に話をつけられた。出てきて」
出てきたのは、"南川奈留"だった。
「奈留?」
「瑞月…。あなたが私を助けてくれたんだ。ごめんね。今までっ!」
奈留は、土下座をしそうな勢いで深々と頭を下げた。
「本当は、私も死んで神様に頼んで瑞月の友達にしてもらったのに…。今まで、遥香の言いたい放題を瑞月にさせてた。前世でいじめられていて、怖かった…。ごめんね…」
「奈留は、許すよ。でも、私の復讐相手は遥香だ。私の復讐は、あいつよりも幸せになること。だから、今からでも遅くない」
だから、一緒にと手を差し伸べると奈留はその手を受け取った。
その様子を翔ちゃんは静かに見守ってくれていた。