*  *
 次の日の夕食後、考子は気になっていたことを新にぶつけた。
「大丈夫?」
「何が?」
「何がって……、なんていうか……、その~、あれよ、あれ」
「あれって?」
「つまり、その~、あの~、最近求めてこないから……」
 アッ、というような表情になった新は思わず吹き出しそうになった。
「あ、違うのよ。別にしたいっていうわけじゃないんだけど、あの~、あなたが我慢しているんじゃないかなって思って」
 考子の顔は真っ赤になっていた。
「じゃあ、襲っちゃおうかな」
 にやけた顔をした新がガォ~と叫んで考子に飛びつくふりをした。
「もう~、心配しているのに茶化さないでよ」
 考子が膨れたふりをして背を向けると、「ごめん、ごめん」と新が後ろから抱きしめて首筋にキスをした。
「こっち向いて」
 考子がそのままの姿勢で新の方に首を傾けると、首を突き出すようにしてキスをした。
「機嫌治った?」
 考子の体をくるんと180度回して正面から抱きしめた。そしてたっぷり時間をかけてキスをしたあと、真面目な顔になって考子の目を直視した。それは産婦人科医の顔だった。
「本当は君と毎日セックスしたいけど、妊娠の初期は子宮が収縮して出血しやすい時期でもあるからセックスは控えた方がいいと思うんだ。切迫流産なんてことになったら大変だからね。安定するまでは、というか、妊娠中は我慢することに決めたんだ。それにセックスしなくったって、君を抱きしめたり、キスしたり、ペッティングできればそれで十分幸せだからね」
 それを聞いて、考子は泣きそうになった。嬉しくて体の芯がジンと熱くなった。
 あ~、なんて素敵な夫なのだろう。
 考子はメロメロになって新の首に両腕を回した。
「ありがとう。あなたと結婚出来て幸せ」
「僕こそ幸せだよ。世界一幸せ」
 2人は時を忘れてキスを交わし続けた。