というより、正直に言うと、僕は今この状況にかなり戸惑っていた。
　こ(・)ち(・)ら(・)側で花村さんから話し掛けられたのは初めてであったし、彼女の方から話し掛けてくるなんて、夢(・)に(・)も(・)思(・)わ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。
　そう……僕がこうして緊張してやや気まずい雰囲気を出してしまっているのは、ただ気になっていた女の子から唐突に話し掛けられたから、ということが理由ではなかった。
　彼女──花村六花こそが、僕がここ最近夢(・)の(・)中(・)で(・)会って話していた女の子だったからだ。
　ちょうど今月に入ったくらいからだろうか。どうしてか、彼女が僕の夢に登場するようになった。でも、僕達はリアルでの関係値はほぼ無いに等しい。辛うじて同じクラス、という接点があるだけだった。
　僕が一方的に想いを募らせているうちに、花村さんが夢の中に出てくるようになったのだろう。何となく、僕は自分の夢に対してそんな解釈をしていた。
　現実では決して手の届かない高嶺の花村さんと、話したい。親しくなりたい。そんな願望が夢になって現れているのだ、と。
　そして、その願望通り僕は夢の中で勝手に花村さんと仲良くなって、色々話(・)し(・)た(・)。正直、こうして言葉にしてみると自分でも気持ち悪いと感じる。
　でも、僕は夢の中で彼女と話すのが好きだった。それはきっと、現実では叶うことがないと自分自身が理解していたからだろう。