「それと、もうひとつ嘘があります」
「……何だよ」

 嘘って、何が嘘なんだ。ひとつの可能性とその非現実性に、僕の頭は大混乱だった。
 そんな僕を見て花村さんはわざとらしく咳払いをしてから、僕の鞄にちらりと視線を送る。

「ほんとはね、君がさっき何の本を読んでたのかも、知ってる」

 その翠色の瞳で僕を見据えて。
 確信めいた様子で、彼女は続けた。
  
「だってそれ、()()()()()()()()()だもんね?」

 花村さんの言葉に、僕は愕然とした。
 もうそれで確定だ。彼女は僕と同じ夢を見ていた。そして、僕は夢の中でリアルの彼女と会話を交わしていた。これまでの会話から全てを察すると、つまりはそういうことになるだろう。