はっきり否定されて、なぜかほっとした。安心するために訊いたつもりなんてなかったのに。
「まあ、トントンみたいに身長あって、顔がよかったらいいなとは思うけど。あいつなら……そういう経験も、多そうだし。や、わかんないけど。あいつそういう話はぜったいしないから」
 三埜くんは気まずさをごまかすようにゼリーをかき込んだ。そういえばこないだ、「おれ、ちゃんとできてる?」と訊かれた。最初はなんのことかわからなかったけれど、申し訳なさそうに丸まった背中を見て、そういうことかと悟った。
 こういうのはフォローしたところであまり意味はないだろうと思って、チャロにしていたみたいにぐりぐり頭を撫でてみたけどれ、あれでは伝わらなかったか。
「いいと思うよ。三埜くんは、三埜くんで」
 自分でも呆れるくらい月並みな台詞だった。それでも彼は表情をぱっと明るくして、「つぎは激辛カレーつくるから」と言った。この子といたら、きっといつまでも口福(こうふく)がつづくのだろう。