【ヒカリノオト】/河邊 徹

某番組の読書コーナーで紹介されていて、実は作者の方が元WEAVERのメンバーと知ってビックリ!

実は一時期WEAVERの「こっちを向いてよ」という曲がすごく自分好みで気に入ったのをきっかけに、WEAVERの曲をよく聴いていた時期があったんです。

アイドルブームの中、90年代のFILED OF VIEWのような爽やかな楽曲ばかりでピアノを全面に出したアレンジもとても心地よくて、すごく懐かしさを感じるなと思って。

解散したことは偶然ネットニュースで知っていたものの、メンバーが作家デビューしていたことは知らなかったので、どんな雰囲気の作品か気になって読んでみたら好みドンピシャでした。

まず文章がとてもテンポ良く違和感なく読みやすい。個人的に苦手なネット小説でよく見る「~すれば」を多用した文章もなく、助詞の使い方が間違っている文章もなく、スラスラ読めるし、作詞されていたこともあって言葉のテンポ感も気持ち良かったです。

そして内容も元ミュージシャンだけあって音楽業界のことがリアルに描かれていて説得力がありました。

売れないシンガーソングライター「染谷達也」をメインに進んでいく連作オムニバスストーリーなんだけど、最後に全てが繋がっていく感覚もとても心地良かったです。

ネット小説では音楽作品と言うとアイドル
(推し)との甘々溺愛系が圧倒的人気だけど、久しぶりに大人世代でも楽しめる何度も読み返したくなる音楽小説に出会えたなと思いました。



【胸懐】(きょうかい)/TAKURO(GLAY)

永遠なんてない。
だからこそ、今この瞬間を大切に生きたい―。

私が人生で最も影響を受けたアーティスト・GLAYのリーダーであるTAKUROさんが、2003年デビュー10周年を前に自身の家族、恋愛、バンド人生について綴ったエッセイ。発売当時高校3年生だった私にとって、色々考えさせられた大好きな作品です。

17歳でGLAYというバンドを結成し、共に青春時代を過ごし、共に夢を見てやってきた東京で、たくさんの苦しみや挫折を経験してやっと手に入れた成功。けれどひきかえに失った存在もあって…。 かけがえのないメンバーとの揺るぎない絆を感じると共に、バンドとしての成功の陰に潜む苦しみや葛藤がリアルに書かれていて、ファンとして胸が苦しくなる部分もありました。 でも、読めば読むほど、GLAYというバンドに懸ける想い、音楽に対する情熱、自分の音楽人生と真摯に向き合う姿が感じられて、益々ファンになりました。

ただの芸能人の暴露本ではなく“エッセイ小説”として文章や表現のクオリティも高い作品。やっぱり詞を書くひとは文章も綺麗だなと思います。 文庫版はGLAYと親交の深いラジオDJ、"やまちゃん"ことやまだひさし氏の熱いあとがきも必読の1冊です。

1998年に『SOUL LOVE』のMVを観てメンバーの仲良しな雰囲気と楽しそうな笑顔にキュンとしてファンになってから早24年。99年の解散危機や05年の事務所独立問題を乗り越え、メンバー自身が何よりもGLAYを想い、そしてファンファーストを貫きながら活動を続けてくれていることは本当に素晴らしいと思います。 「オワコン」ではなく、「一生解散しないバンド」として唯一無二の存在となりつつある彼らの魅力が、この本を読めばきっとわかります。


【空色の椅子】/梶浦 由記

社会現象になった『鬼滅の刃』の主題歌などを手掛けるアニソンクリエイター・梶浦 由記さんのミニエッセイを含んだ初の詩集。

 元Kalafina大ファンの私としては絶対買わなきゃ!と即購入しました。

ほとんどメディアに出演されることがないので、梶浦さんがどんな生い立ちで、どんな想いであの美しい言葉たちを紡いでいるのか、同じ言葉を扱う作家を志す者としてとても興味がありました。

梶浦さんについては、アニメを全く観ていない私よりアニソンに詳しい高校時代の親友の方が先に存在を知っていて、お互い会うといつも「梶浦さんは本当に天才だと思う!」と語り合うくらい尊敬しているソングクリエイターです。

あの独特の言葉選びにはやはりオペラや海外文学の要素が詰まっているんだな、と知って納得。

特に2010年代以降のアイドルブームでとにかく「キミが大好き!キュンキュンする!」という恋愛史上主義なある意味幼稚な歌詞ばかりになってしまった日本の音楽界の中で、一線を画して文学的で情緒的な知性溢れる詞を書く方だなと思います。

ここで私が梶浦さん楽曲で歌詞が大好きな曲ベスト5を紹介します。

 『胸の行方』/Kalafina

全編大好きな歌詞ですが、特に好きな2フレーズがこちら。

♪好きな本の最後の一行に込み上げる愛しさを
 誰に語ることもなく閉じ込めて
 胸はどこへ行くのだろう


子供の頃から読書好きで、まだネットもSNSも普及していなかった中学時代、まさにお気に入りの作家さんの作品を読み終えたあとに感じていたことを見事に言語化してくれたようなフレーズで鳥肌が立ちました。


♪夢ばかりを見ていると言われても
 ただ優しくなりたい
 目の前の人達を慰める言葉だけを見つけたい

ひとりひとりがこのフレーズのような気持ちで日々を過ごせたら、世界はきっともっと優しく平和になるのにな…と世界平和にまで発想が飛ばせるシンプルなのにとても深いフレーズだと思います。


 『アレルヤ』/Kalafina

小さな頃からずっと一緒に暮らしていた大好きな祖母が、5年間に渡る認知症とパーキンソン病の闘病の末亡くなった数ヶ月後にリリースされたこともあり、「命」をテーマにした歌詞の一言一言に泣けた楽曲。特に好きなのが↓のフレーズです。

♪明るい方へ明るい方へ
 きっともがいて何度も泣いて
 僕らは行く 僕らは行く

♪小さな命を振り絞って振り絞って
 振り絞って 君の未来へ アレルヤ

まさに「命の讃歌」と言える楽曲。
歌詞はもちろんのこと、3人の美しいコーラスワークも素晴らしいです。


『Melody 』/千葉 紗子

当初『虹色のMelody』というタイトルで書いていた『君と奏でる世界は、虹色に輝いている。』のクライマックスがなかなか浮かばずにいた時、親友が「Kalafinaと同じ梶浦さんプロデュースの曲ですごく良い曲があるよ」とオススメしてくれたのがこの曲です。歌詞が歌に人生を懸ける主人公の想いそのもので、一気にラストまで書けた思い出があります。特に好きなフレーズがこちら↓

♪せめて好きな歌をひとつ
 誰かに届く深さで歌っていたい

♪遠いあなたへMelody届けたい
 私の声で 私だけのMelody