あの日円陣を組んで再会を約束した後、私たちは二十五歳の自分たちに思いをはせた。
「お姉ちゃんね、成人式で二十五歳の時にお互い独身だったら結婚しようって男友達と約束したんだって! ロマンチックー! ウチも言われてみたーい!」
「そうか、二十五だったら結婚しててもおかしくないのか」
 考え込む翔と対照的に、健はげらげら笑った。
「萌は四十になっても結婚できなさそうだけどな」
「はあ? 健こそ一生結婚できないんじゃないの? ウチはできるけどね!」
「無理無理! 可哀想だから、このタイムカプセル開けた時にお前が独身だったら嫁にもらってやるよ」
「最悪すぎるー。でも、どうしてもって言うなら、健で妥協してあげてもいいけどー」
 それ実質プロポーズじゃん、なんて突っ込んだら絶対怒られるので私はにこにこと二人の微笑ましいやり取りを見守っていた。
「紗菜はさ、いくつで結婚したい?」
 二人が騒ぐ中、小声で翔に聞かれた。
「二十五」
 私は咄嗟に、母が結婚した年齢を答えた。
「俺も」
「じゃあ……」
 私たちも、約束の日にお互い独身だったら結婚する?とは言えなかった。そんなことが言えるならとっくに告白している。しばらくの沈黙のあと、翔が呟いた。
「健と萌と同じことする? 真似したみたいで癪だけどさ」
 夢みたいに嬉しくて、胸がいっぱいで何も言えなくて、私は黙ってうなずいた。
「じゃあ、その時お互い独り身だったら結婚しよう」
 健と萌の痴話喧嘩にかき消されそうなほど小さな声だったけれど、その約束は確かに聞こえた。私はあの頃から無意識に、健と萌の恋に私の恋の行方を重ねていた。二人が結ばれれば、私も翔と結ばれるような気がした。それはあまりにも幼く根拠のない願掛けだった。