数日後、私は最後の仕上げで細い筆を持っていた。気になったところを直していく。
最後にキャンバスから少し離れて自分の絵を見てみると、もう手直ししたいところは残っていなかった。
「完成……」
私がそう呟いたのを聞いて、美坂さんが立ち上がった。
「出来たの……!?見ていい?」
「うん」
私の絵を美坂さんがじーっと静かにしばらく見ていた。
「うん、めっちゃ素敵!私、やっぱり川崎さんの絵が大好き」
美坂さんが子供のように、はしゃいでいるのが可愛かった。
「ねぇ、美坂さん。今日の部活が終わったら、菅谷くんと草野くんを呼んでもいい?絵を見せたくて……」
「もちろん!モデルの二人だもんね」
「じゃあ、部活終わり呼ぶね」
「うん。私も一緒に残ろっと」
美坂さんの言葉に私はつい嬉しくなってしまう。四人で揃うのは、久しぶりだから。それから部活が終わるまでの時間は、いつもよりずっと長く感じた。
部活が終わって他の部員が帰った後に、すぐに菅谷くんと草野くんに連絡を送った。わずか5分ほどでパタパタと廊下から走ってくる足音が聞こえてくる。
「絵が完成したの!?ていうか、この部屋涼し!」
草野くんは部活終わりとは思えないほど元気でいつも通りだった。草野くんの後ろから菅谷くんも顔を出した。
「川崎さん、絵完成したの?」
「うん。出来たよ」
私の言葉に菅谷くんと草野くんが私の絵が置いてある机まで軽く走ってくる。絵を見て、始めに言葉を発したのは草野くんの方だった。
「うわ!めっちゃ上手!」
草野くんが「どれが俺!?」と嬉しそうに聞いてくれる。
「この選手が草野くんで、こっちが菅谷くん」
「確かに俺の雰囲気出てるわ!めっちゃ格好いい雰囲気!」
草野くんがそうふざけてボケたのに、菅谷くんがいつものようにツッコまない。草野くんが「菅谷、ツッコめよ!」と笑って肩をポンと叩くとやっと草野くんの言葉に気づいたようだった。
「ああ、わりぃ。本気で言ってるのかと思った」
「言うわけあるか!」
草野くんはそのまま笑いながら、美坂さんに少し離れた場所に置いてある画材について聞いている。菅谷くんは私の隣に来て、何故か「川崎さん、ありがと」とお礼を言った。
「俺、なんか今この絵が残ったことがすごい嬉しい。楽しい思い出を川崎さんが残してくれたみたい」
「こちらこそ描かせてくれて感謝しかないよ。本当に楽しくて、あっという間だった」
「川崎さん、きっとこの楽しい時間はこれからも沢山あるよ」
菅谷くんが少し離れたところにいる草野くん達に聞こえないように小声で話を続ける。
「症状が出てて寂しくて長く感じる時間より、この楽しい時間の方が多くなっていく気がする。ねぇ、川崎さん。手、出して」
菅谷くんの言葉の意味が理解出来ないまま、私は手を出した。菅谷くんは私の手を片手でギュッと握った。
「菅谷くん……!?」
「症状が出て寂しい時はこうやって手を繋いで、一緒に勇気を出そう。それで寂しくて長く感じる時間を終わらせて、楽しい時間をいっぱい過ごせるようにしたい」
菅谷くんはそう言って、草野くん達に気づかれる前にパッと手を離した。
「大丈夫だよ。川崎さん。俺ら、寂しくない。絶対に大丈夫」
菅谷くんは最後に「楽しい時間が多い方が良いし」と笑った。
草野くんと美坂さんが話し終えて、こちらに戻ってくる。
「なぁ、折角だしこのまま4人で一緒に帰らね?」
草野くんの言葉に美坂さんが「もちろん」と笑っている。
「菅谷と川崎さんは?」
私と菅谷くんは一瞬パッと顔を合わせてから、声を揃えて答えた。
「「帰る!」」
帰る準備を終わらせて、4人で部室を出る。私は最後に誰もいなくなった部室の電気を消した。そして、心の中でもう一度いつもの言葉を言い聞かせる。
「寂しくないよ。大丈夫」
私は暗くなった部室を離れて、3人の所に駆け寄った。
最後にキャンバスから少し離れて自分の絵を見てみると、もう手直ししたいところは残っていなかった。
「完成……」
私がそう呟いたのを聞いて、美坂さんが立ち上がった。
「出来たの……!?見ていい?」
「うん」
私の絵を美坂さんがじーっと静かにしばらく見ていた。
「うん、めっちゃ素敵!私、やっぱり川崎さんの絵が大好き」
美坂さんが子供のように、はしゃいでいるのが可愛かった。
「ねぇ、美坂さん。今日の部活が終わったら、菅谷くんと草野くんを呼んでもいい?絵を見せたくて……」
「もちろん!モデルの二人だもんね」
「じゃあ、部活終わり呼ぶね」
「うん。私も一緒に残ろっと」
美坂さんの言葉に私はつい嬉しくなってしまう。四人で揃うのは、久しぶりだから。それから部活が終わるまでの時間は、いつもよりずっと長く感じた。
部活が終わって他の部員が帰った後に、すぐに菅谷くんと草野くんに連絡を送った。わずか5分ほどでパタパタと廊下から走ってくる足音が聞こえてくる。
「絵が完成したの!?ていうか、この部屋涼し!」
草野くんは部活終わりとは思えないほど元気でいつも通りだった。草野くんの後ろから菅谷くんも顔を出した。
「川崎さん、絵完成したの?」
「うん。出来たよ」
私の言葉に菅谷くんと草野くんが私の絵が置いてある机まで軽く走ってくる。絵を見て、始めに言葉を発したのは草野くんの方だった。
「うわ!めっちゃ上手!」
草野くんが「どれが俺!?」と嬉しそうに聞いてくれる。
「この選手が草野くんで、こっちが菅谷くん」
「確かに俺の雰囲気出てるわ!めっちゃ格好いい雰囲気!」
草野くんがそうふざけてボケたのに、菅谷くんがいつものようにツッコまない。草野くんが「菅谷、ツッコめよ!」と笑って肩をポンと叩くとやっと草野くんの言葉に気づいたようだった。
「ああ、わりぃ。本気で言ってるのかと思った」
「言うわけあるか!」
草野くんはそのまま笑いながら、美坂さんに少し離れた場所に置いてある画材について聞いている。菅谷くんは私の隣に来て、何故か「川崎さん、ありがと」とお礼を言った。
「俺、なんか今この絵が残ったことがすごい嬉しい。楽しい思い出を川崎さんが残してくれたみたい」
「こちらこそ描かせてくれて感謝しかないよ。本当に楽しくて、あっという間だった」
「川崎さん、きっとこの楽しい時間はこれからも沢山あるよ」
菅谷くんが少し離れたところにいる草野くん達に聞こえないように小声で話を続ける。
「症状が出てて寂しくて長く感じる時間より、この楽しい時間の方が多くなっていく気がする。ねぇ、川崎さん。手、出して」
菅谷くんの言葉の意味が理解出来ないまま、私は手を出した。菅谷くんは私の手を片手でギュッと握った。
「菅谷くん……!?」
「症状が出て寂しい時はこうやって手を繋いで、一緒に勇気を出そう。それで寂しくて長く感じる時間を終わらせて、楽しい時間をいっぱい過ごせるようにしたい」
菅谷くんはそう言って、草野くん達に気づかれる前にパッと手を離した。
「大丈夫だよ。川崎さん。俺ら、寂しくない。絶対に大丈夫」
菅谷くんは最後に「楽しい時間が多い方が良いし」と笑った。
草野くんと美坂さんが話し終えて、こちらに戻ってくる。
「なぁ、折角だしこのまま4人で一緒に帰らね?」
草野くんの言葉に美坂さんが「もちろん」と笑っている。
「菅谷と川崎さんは?」
私と菅谷くんは一瞬パッと顔を合わせてから、声を揃えて答えた。
「「帰る!」」
帰る準備を終わらせて、4人で部室を出る。私は最後に誰もいなくなった部室の電気を消した。そして、心の中でもう一度いつもの言葉を言い聞かせる。
「寂しくないよ。大丈夫」
私は暗くなった部室を離れて、3人の所に駆け寄った。