気が付いたら、布団の中にいた。
 カーテンから漏れる光が明るかった。
 私は昨日どうやって家に帰ったのか全く覚えていなかった。
「清太郎……」
 なぜか嫌な予感がしていた。
 全部夢だったんじゃないかと感じるような。
 喪失感に包まれていた。
 プレゼント……。
 はっ、、
 クマちゃん!
 どこ……。
 私は布団を飛び出して部屋を見渡す。
 クマちゃんは机の上に当たり前のようにあった。
「夢じゃなかった……よかった」
 

 だけどその日から、清太郎に会えることはなかった……。
 

 毎日のように浜辺に行って清太郎を待った。
 何度も呼んだ。
 返事が聞こえるんじゃないかと思って。
 イヤホンは絶対着けなかった。
 きらきら星が聞こえてくるんじゃないかと思って。
 髪の毛をこまめに切った。
 清太郎の好きだと言ってくれた私のままでいたら、会いに来たくなると思って。
 クマちゃんはスクールバックに着けた。
 わかりやすいとこだったら、見つけてくれると思って。
 
 
 あの日から私は清太郎に会いたくて、清太郎の好きな私のままでいたくて、ずっと頑張ってきたよ。
 あれからずいぶん経った。
 いくら頑張っても状況はなにも変わらなくて、辛くて、強がっていた私が少しずつ少しずつ壊れていく。
 日常のあらゆることに清太郎の面影を探してそして見つけた何でもない周りのみんなの小さな行動が私の心をえぐっていく。
 みんな何も悪くない。でも私は、みんなのせいで苦しみが増えていく。
 どうすればいいんだろう。
 耐えたいのに少しずつ耐えられなくなっていく。
 もう疲れたんだ。
 ごめんね、お願い守れそうにないや。
 もう、終わりにしよう。
 今夜、あの浜辺で……。


 ふいに、予鈴が鳴った。
 今日も君のいない一日が始まる。
 そして、何事もなく終わった。