放課後になると荷物を持ってできるだけ早く教室から出て、下駄箱へと向かう。
 私は、どこの部活も選ばずに帰宅部になることを選んだ。帰宅部を選んだ理由は、その方が自由で気楽で居られるから。知らない先輩や隣のクラスの子など人間関係を作るのが嫌だったということもある。
 でも、一番の理由は部活を入ることをお母さんたちが許さないからだ。
 部活は遊びだと思われてしまう。学校は学ぶためにあると。
 それならより、部活に入りたいと思うことはなかった。

 放課後に教室に残っていると、お手伝いを先生などから頼まれたりするのが嫌で基本的に学校からすぐに出るのが当たり前だった。
 でも、あの家に早く帰りたくなくて、いつも市立図書館に行って本を読んだり勉強をすることが多い。
 怒られるのではないかと、私に怒りを向けない時でも怒鳴る声を聞いて無意識に怯えなくて済むから。
  この時間は私にとって、遠慮せずに自分の世界へと入っていける。そんな時間だった。

 日はまだまだ長く空は明るい。気がつくと額に薄っすらと汗が浮かび上がっている。
 これからの時期は汗が肌に張り付いたりして、あまり好きではない。持っていたハンカチで汗を拭いた。
 冬になると太陽が消えて暗い夜が長いのに、春へとなっていくにつれ太陽が長く顔を出していることに、自然は不思議だと思う。
 
 市立図書館で過ごすという日課で今日も行こうと迷わずに向っていた矢先に、頭の中で今日見た夢がちらつく。
 あの夢に遊ばれるように、掻き乱されているような気がした。

 そういえば、幼い頃によく遊んでいたあの公園にもう、どのくらいの間立ち入ってないのだろう。
 たくさん遊んだあの遊具たちは残っているのだろうか。そもそも公園事態あるのだろうか。
 ゆいくんが遠くの方へ引っ越してしまった日から、一度も行ってない。だって、たくさん笑い合って楽しく過ごした日々を思い出してしまうのが嫌だったから。

 気づいたときのは、あの公園のことがすごく気になり出していた。

―――なんだか......私らしくない。

 思い出の地へ行こうと来た道を引き返す。
 まず、家へ帰るときと同じ駅に着くように、いつも乗っている電車に向かう。
 電車の中では丁度、私と同じ高校の人たちや違う学校の生徒たちがたくさんいた。

 駅に着いた後、自分の家がある道とは逆の方向へと向かう。その後は右に曲がったり、左に曲がったり。
 あの公園へ行くのは、すごく久しぶりのはずなのに、何故か行く道を覚えていて躊躇することなく進んで歩く自分に少しびっくりする。
 
 持っていた水筒で水分補給したりしながら歩いていくと、川が流れる音と子どもたちの声が聞こえてきた。