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真っ直ぐ、得たい事実だけを探すように俺はその瞳をじっと見つめる。
「お、おれ、中学の時から劣等感、みたいな感情にずっと苛まれてて、演劇部だったんすけど、一緒にいたやつがツラが良くて。
俺にだって夢あったんすよ、俳優になるって夢。なのにただの顔だけのやつに全部良い役持っていかれて!
そいつに全部役取られてたんすよ。高校あがっても何も良いことなんてなかったしすぐ中退しました」
まだ17歳という若さでここまで自分を卑下して落ちぶれていくのは自分自身の弱さが悪いのか、それにつけ込む大人たちが悪いのか。
そんなことを聞くつもりはない。
俺は、彼と自分の間にある冷たいテーブルの上に手を置き、「で」と冷たく詰め寄った。
「俺はお前がどんな人生を歩んで落ちぶれたかなんて、今知りたくない。
知りたいのは、半グレ集団の情報とレホメディの取引場所だ」
「ああ、お兄さんもツラめっちゃいいっすね、さぞ良い人生送ってきたんでしょ。なんかあいつと似てて気に食わないから喋りたくないっす」
「…ペリクと会ったことはあるのか」
「…言わない」
苛立ちの感情を吐いた息で流して、俺はゆっくりと立ち上がる。
そして一定のリズムを刻む足音がそこに響いた。
俺は17歳の彼がこの先どうなるのかなんて正直どうでもよかった。
自分の恩師のように、こいつのために窓ガラスを割って手を差し伸べるほど人間が出来ていない。
手でピストルをつくって、彼の後頭部に人差し指をつけた。
「け、刑事さん」
「お前、何か勘違いしてない」
「な、なんすか」
「お前が今ここにいるってことは、半グレ集団を裏切ったことには変わりないだろ、ここで何も喋らず釈放されてみろ、お前死ぬぞ。裏切り者として」
「っ」
殺せやしないのに後頭部に当たったそれが本物の銃かのように彼の体が硬直する。
少し、かわいそうだと思った。自分の弱さだったとはいえ上手く利用されて捨てられかけてる17歳。
「俺たちに協力して守ってもらうか、死ぬかのどちらかってことを忘れるなよ、未成年くん」
選択を間違えれば人は善にも悪にも簡単に染まってしまう。俺は、差し伸べられた手を掴んだから今ここにいる。
俺なりの答えは、ここで事実を追求することだ。
俺は、正義のヒーローになった。