僕は何もなくてもリンデルに愛されているワンドが嫌いだ。
スター国のお宝を狙うペリクの方がよほど好感が持てた。
「そもそも、アイマイはどこの星からきた奴らなの?」
星子は好奇心をその大きな瞳に宿しながらそう言う。
そんな深いこと考えていなかったが、僕は星子に幻滅されたくなくて必死に脳内の知識をあれでもないこれでもないと引っ張り出した。
さすがヨウくんだ、と好きな人に思われたいと純粋に思う。
「エイチディー93129エー」
「なにそれ呪文?」
「恒星の名前だよ」
「きいたことないよそんな星」と首を傾げる星子に僕は得意げに人差し指を上に向けた。
「銀河系の中でも1番光度が大きい星なんだ」
「こうどってなに?」
「光の明るさ」
「ふーん」
「だからアイマイは最強なんだ。到底ワンドが立ち向かえる相手じゃない」
そういうと星子は不服な顔をみせて、足をふらふらと大きく揺らす。
星子の足先が幾分か低い位置にいる僕の顔に当たりそうだ。
「スター国だって最強だもーん、レホメディあるし」
「どうだか」
最終決戦は運良く僕が書く番になっている。
僕はあわよくばペリクがワンドに勝って、ついでにリンデルも奪い去っていきたいところだけれど、普通の御伽話ではワンドが勝ち、愛の力でスター国の平和を取り戻すのだろう。
まあでも、どちらでもいい。
僕はこの時間が続くなら、物語の続きなんてどう転ぼうが納得するだろう。
「変にバトル系の話に持っていかないでね!あくまでもリンデルとワンドの愛の物語なんだから」
「はいはい、じゃあまた明日」
僕たちは当たり前のように約束をして、短い休み時間を終えた。