オレはずっと、家が嫌いだった。否、家だけじゃなくてババァも嫌い。祖父と親父は別にどうでも良いけど、ババァは嫌いだった。

小さい頃からオレと真央に「将来は立派な憑き物落とし屋になってね」と言い続けていた。まぁ、家を継ぐことを望まれていたのだろう。

 オレ達には能力がある。水と氷、真央が操った水をオレが凍らせる。今はコンボ技として使うことが多いけど昔は、、、それこそ生きていた時はオレだけで戦っていた。後ろで怖がる真央を守りたかったから。

 それなのに、ババァは真央を(のの)しった。夏谷家に生まれていながら憑き物を怖がるなんて、そう言いたいのだろう。

『、、、巫山戯(ふざけ)るな』

真央は優しい子だ。

優しい、ただの子供なんだ。

それに関しては、誰よりも深く知っている。

「兄さま?どうしたの?」

『何でもない、、、』

 お前が十歳の頃、ババァに折檻(せっかん)されて座敷牢に閉じ込められた時、怖くて、泣いていたよな。何度も「兄さま助けて!」ってオレに助けを求めたよな。力尽きて起き上がれなくなって、床を爪で引っ掻いていたよな。ごめんな、助けてやれなくて、、、。

あの時もそうだ。お前を悲しませて、ババァから冷たく当たられるようになった原因を作ってしまったのは他でもない、オレなのだから―――。

 真央が好きだから、この世の誰よりも愛しているから、、、だから、頼む。お前は生きてくれ。