「何言ってんの。1ヶ月後はさすがにない、ありえないでしょ」
「じゃあ、もしあと1ヶ月間地球がもったら、沙里(さり)は当てた俺に何くれんの」
「んー。当たったじゃんすごいじゃんの拍手、とか?」
「うっわ、いらねえ」
「じゃあ握手!」
「もっといらねえ」
吾一(ごいち)の嘘つきー。ほんとは私の手、握りたいくせに!」

 そう言って、思いきり吾一の手を握る。イテテテ!と大袈裟なリアクションをとる彼だけれど、その角ばった大きな手が私のへなちょこ握力にやられるわけないじゃない。

 離せよ、の言葉と共に離れていく手。昔はいつまでも繋がっていられたのに。

「沙里は?」
「うん?」
「沙里はいつ、この世界が終わると思ってんの」

 吾一に振り払われた手を、そのままサイドの髪へ運んでいれば、今度は私が質問を受けた。髪を耳にかけながら、束の間見つめ合いドキッとする。公園のベンチで並んでふたり。先ほどまでBGMとして流れていた噴水の水の音は、定刻の夜九時になったのか、たった今止んでしまった。

「今日、かな」
「え、今日?」
「そう、今日。あと15分くらいで終わるんじゃない?」

 丸くなる、吾一の目。私より断然つぶらで羨ましい。

「それはないだろ」
「どうして?」
「あと15分で俺もお前も死ぬなんて、急すぎる」
「そんなことないよ。吾一が言う1ヶ月後だって、その日になれば急でしょう?いつだって突然だよ、唐突だよ。人の死なんて」