あっという間に、放課後になった。
僕は、彼女に内緒でペアのネックレスを特注で注文していた。今日、受取に行く。
「いらっしゃいませ」
「あら、紘一くん。どうしたの?」
そう言ったのは、瑠璃の母親の瑠奈さんだ。瑠奈さんは、最近ネットで有名なアクセサリー店のオーナーだ。
「瑠奈さん。注文していたネックレスのことです」
「あぁ、はいはい。待ってましたよ」
そう言って、瑠奈さんは店の奥に引っ込んだ。しばらくするとまた出てきた。
「はい、これでいい?」
ネックレスは、月のネックレス。
僕と瑠璃でネックレスを組み合わせると、満月になるという面白いもの。
僕は、そのネックレスを買って、早速付けてみると瑠奈さんにかっこいい、と褒められた。
「ありがとうございました」
そう言われ、店を出た。
急いで、待ち合わせのプラネタリウムに行った。
ネックレスは、終わってから渡そう。
プラネタリウムの近くには、瑠璃が待っていた。
「瑠璃」
声をかけても、中々反応しなかったから少し大きめの声で「瑠璃」と呼ぶとビクッと反応した。
何だ、今の。ぼーっとしていたのかな?
「紘一。行こう」
そう言いあって、僕らは入場券を買った。
「大人に2枚。3200円です」
「あ、はい!」
瑠璃がお金を払おうとしていたけれど僕は止めた。
「僕のおごり」
大体、いつも割り勘っていう感じだから僕の予想外の行動に驚きつつも「分かった」と言った。
中に入ると、とても、すごかった。
「凄い!」 
満天の星空を映すスクリーンとふかふかの椅子。
ほどなくして、プラネタリウムは始まった。
僕は、解説より瑠璃の笑顔が好きで、ずっとそっちに意識が行った。僕の視線に気がついたのか瑠璃はこっちを見るとクスクスと笑った。
この幸せが、永遠に続けば良いのに。





「はぁー、楽しかった!」
「ねぇ、瑠璃。あそこの公園、寄らない?」
そう言い、指を差した方向の公園に向かった。
「ところで、そのネックレスは?」
気づかれた。まぁ、そりゃそうか。
「とりあえず、僕からプレゼント」
そう言って差し出したネックレス。突然のプレゼントに困惑していながらも喜んでくれた。
「きれーい」
満月の片割れのネックレス。
「もしかして…?」
「うん」
2人のネックレスをくっつけて満月を作ってツーショットを撮った。そのツーショットは、スマホの待ち受け画面にした。
与野紘一の人生が終わるのは、あと少し先のことだった。そして、彼女が隠していた秘密に僕は気づかなかった。