僕は、瑠璃が買い物に行っている間紘一の家に出向いた。
チャイムを押すと母さんが現れた。
そして、僕に教える。
「お父さんがいるわよ」
と。
父さんは、20年前以降会っていない。
リビングに通されると、新聞を黙々と読む眼鏡の男の人が1人座っていた。
僕の、父だ。
「あなた、お客様よ」
「おぉ、そうか。陽菜(はるな)、知っている人か?」
「フフッ、私達が一番知っている人よ、和真(かずまさ)さん」
陽菜と和真は、僕の母と父の名前。
久しぶりの名前に安心感を抱いた。
「さぁて、きみは誰かな?」
父は、優しくてでも、怒るとものすごく怖い。
昔、物に乱暴していたら説教を5分間された。
今となっては、懐かしさこの上ない。
「お久しぶりです、父さん」
そう言うと、父さんは口をパクパクさせていた。その反応に母さんは、笑いだしソロ~っと離れていった。
「紘一、なのか?」
「そうだよ、僕は紘一。ずっと、会いたかった!」
父さんのそばに駆け寄ると目に涙を溜めていた。
決して泣くことが無かった父の初めての涙に驚きつつも分かってくれたんだという嬉しさが勝っていた。
「紘一、大きくなったなぁ。会えてよかった。もう、俺泣きそうだ」
「泣いてるよ、もう」
僕に言われて気が付いたみたいに驚いていた。
「陽菜は、知っているのか?」
「うん、一昨日来てそのまま直進で向かって」
「そうか、そうか…」
そう言って父さんは、母さんを呼びそのまま父さんは2階に上がったまま降りては来なかった。