進Side
俺の親友、与野紘一は20年前事故で命を落とした。16歳、俺等は親友で共に良きライバルだった。仲が良くて、気さくに話しかける仲。
この幸せが、いつかは壊れることをこの時俺は知らなかった。
事故が遭ったとき、巻き込まれそうになった瑠璃ちゃんー彼女の小野山瑠璃を助けようと紘一は自分の身を捨てた。
瑠璃ちゃんは、紘一を亡くしたショックにより"PTSD"になってしまったとおばさんから聞いた。20年が経ち、おばさんから瑠璃ちゃんの"PTSD"も緩和されてきたとだけ連絡が来た。
その連絡が届いて数ヶ月後、与野紘一、いや与野紘一の生まれ変わりの与野叡がうちにやってきた。
案の定、瑠璃ちゃんの居場所を聞いてきた。
おばさんたちしか瑠璃ちゃんの居場所は、知らない。だから、海で見かけたことだけを教えた。
俺は、紘一に会って"生まれ変わり"って本当にあったんだな、と思った。今まで、そんな夢物語があればいいと思い込んでいた。
紘一は、叡として紘一として俺等に会いにきた。それだけでもう、俺は満足だった。
紘一に、瑠璃ちゃんが"PTSD"になったことは話せなかった。言ったら、紘一は自分を責めるだろう。そう思って、言えなかった。
紘一、許してくれー。