六月も後半に差し掛かった。このところじめっとした暑さが連日続いている。最近では鎮守の森のセミたちも明け方頃から鳴き始め、寮のみんな少し寝不足気味だ。

開門祭が終わると、学校内の雰囲気は一学期の終わりにある奉納祭一色になった。放課後や昼休みの空いた時間に至る所で自主練する学生の姿が見られる。みんな金一封に向けて必死に特訓しているようだ。

私たち二年生も今回はかなり気合いが入っている。なんせ去年は入院中で参加できなかったものだから、今年こそはと息巻いている。


数日前から私達も自主練を初め、今日は薫先生を捕まえて形代操術(かたしろそうじゅつ)の稽古をつけてもらっている。

奉納祭の種目の一つである、形代使ってその速さをを競わせるレースの特訓だ。


レースの種類は動物型と人型を競わせる二種類あって、難易度が高い人型は入賞すると得点がかなり貰える。なんでも動物型の一位と人型の最下位は同じ得点なんだとか。

形代操術の授業は2年生になってすぐに始まったけれど、私たちはまだ馬、牛、鳥、犬の形の形代しか動かす練習をしたことがない。

出場に制限はないけれど、毎年2年生は馬で参加するのが基本らしく、人型はほぼ三年生の競技なんだとか。

けれどどうしても人型で出たいと言った慶賀くんに合わせて私達も急遽人型を動かす練習を初めて今に至る。