そんな彼女を見つめながら、煮切れていない野菜を白米と一緒に飲み込んだ。

――ユキの父親はよく外出をするのだろうか。
――この広く寂しい空間で、ユキはいつも一人で食事をとっているのだろうか。

ふと、ユキの儚げな表情が浮かんだ。
綺麗な花の影。まるで僕の母親と同じように、なにかを欲しているような目をしていた、ユキの顔が。

「ウミ」
「…なに?」
「本当はさ、お父さんがなんのために外に出てるのか知ってるんだ」
「…」
「夜遅くに家を出て行く」
「…」
「朝に帰ってくることも、よくあって」
「…」
「お母さんがいなくなった悲しみを埋めるように、お父さんは女の人のところに行ってるの」
「ユキ」
「私のことなんてほったらかしで」
「――ユキ」

気が付いたら、僕の身体はテーブルの反対側にまわっていた。
食べかけのカレーライスをそのままに、細いユキの身体を力いっぱい抱き締めた。

「ねえ、ウミ。お願い」

ユキが僕の名を呼ぶ。
僕の背中に回された腕はするすると上昇する。
大きな二重が、血色の良い薄い唇が、僕の方に近づいた。
はじめて触れた彼女の柔らかい身体に、甘いコットンの香りに、激流のように全身を駆け巡る熱に――、

「……慰めて」

惑わされた。