小さい頃から空を見上げるのが大好きだった。

真っ青な蒼に、雪のように真っ白な雲が浮かんでは、風に乗って流れてく様が自分の立っている地面のある世界と切り離されてぽっかり存在してるみたいでとても好きだった。

雲に手を伸ばしたことも一度や二度じゃない。
ジャックと豆の木みたいに雲まで届くツルがあればいいのに。

小さい頃、木登りが得意だった僕は一番高い木に登ってはもっと高く手を伸ばして、空の世界に行きたくてうんと背伸びしてたな。

雲って触れたらどんな感触だろうね。

きっとふわふわのわたがしみたいに繊細で、
かき氷みたいに冷んやりしてて、
雪のように触れたらすぐに溶けていくんだろうね。

あの雲に乗れたら何処へ行こうかな。

忘れられないあの日の景色を目的地にして雲に乗ってひとっ飛びしてもいいかもね。

そうして忘れられない景色から、忘れ物を拾い集めて小さく丸めてぱくんと食べて。


僕の中にも雲が浮かぶ。
ぽっかりと。
ゆっくりと。
ふわふわと。

その雲が何色になるのか何処へ向かうのか、きっと誰にもわからない。

ただ流れに身を任せて空に浮かぶのも悪くない。


ただ君を想いながら。

ただただ揺れて漂うだけ。


2022.7.31