水の中ってね、色んなイロがあるんだよ。
オーソドックスな淡い水色、ビー玉みたいな透明なブルー、陽の光を浴びた眩い白銀色。濃い蒼の中に、泡の仄かなグレーと乳白色が入り混じって、水のカタチが大きな魚のウロコみたいに漂いながら、ほんのり光って水の中の僕を映すんだ。
泳ぐたびに
腕を動かすたびに
呼吸をするたびに
真っ白と蒼を水の中の無限のテープレコーダーみたいに繰り返して、また青と水色に戻ってきてすぐ泡みたいに白が消えて。
水が呼吸する音が、僕のくぐもった耳元に近づいてきて直前でそっと離れていく。
もう身体がダルくても息苦しくても、宝石みたいに僕を嘲笑う美しさの原石を纏った水面の輝きに包まれたら、ほんとどうでもいいやってなっちゃって。
身体を水の上にぷかぷか預けて眩暈がするような無重力を味わいながら、僕に向かって降り注ぐワガママな太陽の光に目を瞑る。
一瞬なんにも見えなくなって。
体の感覚が消えてなくなって。
僕だけが夏空に放り込まれて。
ただゆっくりぽっかり浮かんでる。
トクトク とくん、と鼓動が空に響いて。
僕だけがひとりぼっち。
でも嫌なひとりぼっちじゃない。
自分が自由になることに似てるから。
そんなふうに自分勝手にいつもいつも寂しい影をみつけては見て見ぬフリしてるけど。
そして気づけば空からは懐かしくて誰もがしってる匂いがしてて。
やっぱり、ひとりぼっちなんかじゃないやって思い直す。ひとりぼっちって寂しいだけの塊でもはや息すらできない程の孤独な真っ黒の世界に一人で放り込まれるのかと思ってたけどちょっと違う。
ひとりぼっちじゃ、呼吸できないからね。
ひとりぼっちじゃないよ。
僕も。君も。みんな。