怠惰な暮らしの中で、僕のヒカリはキミだった。

捨て猫のように人間を憎んで、睨みつけて虚勢を張っていた僕とキミは、あの夜に出会ったね。

キミはどこか寂しげで、僕と同じように今にも泣き出しそうで、僕らは並んで海を見つめた。

いつしかたわいないことを話すようになって、
やがて共に眠り、隣にいることが当たり前になった。


桜の花びらが舞う春を手を繋いで歩き、

夜空を彩る煌びやかな花火に心を奪われて、

金色に輝くイチョウに穏やかな秋の訪れを感じて、

ふわりと舞い降りてきた真っ白な雪に手を伸ばす。

そんなありきたりで、どこか優しくて寂しくもある日々の中で僕のヒカリはキミになったんだ。

なんにもいらない。
ヒカリがあればそれだけで良かった。

太陽も月も星いらなかった。
綺麗なモノなんかどうでも良かったんだ。

僕はどこで間違えたんだろう。

考えても考えても無限ループで、僕の視界は目が回る。

あの時、どんな言葉をキミにかけられていたらキミは遠くへ行かなかったんだろうか。 


僕の隣にいてくれた?


答えは出ないまま、ただひとりぼっちの季節が幾つも過ぎて、僕の隣は空っぽのまま。

寂しいと寂しいを足すと、
答えは『寄り添う』だと教えてくれたキミはもういない。

──僕は寂しいよ。

何度、呟いたかわからない。でもその言葉にいつかキミが寂しいね、と答えてくれる気がして、僕は口に吐くのがやめられない。  

──キミは寂しくない?

僕はどこにいても何をしていても、キミばっかり思い出しては探してる。

ワザと季節感のない服をきて、くたびれた靴を引き摺って、僕は今日も寂しいままにひとりぼっちで生きていく。 


ねぇ、寂しいよ。

うん、寂しいね。


僕は返事がなくても繰り返す。

またいつかキミと『寄り添う』その日まで。


2025.9.24