聞いて。

嬉しいことがあった。

楽しいことを見つけた。

悲しいことに出会った。


そんなときに頭の中に浮かぶ人が貴方であって欲しい。
だって貴方にいちばんに聞いて欲しいから。



それでね。

──うんうん、そっか、へぇ、マジで。

聞いてるのか聞いてないのか、煙草をふかしながら相槌を打つのが上手な貴方は、私の話にただそう言いながら頷いてみせる。


でもね。

ときおり、言葉にすることができないくらい苦しいことがあって、ただ涙しか出てこなくて、いつもみたいに貴方に伝えられないときがある。

そんなとき、ただ黙って、ぎゅっと抱きしめてくれるのが貴方で本当に良かったと心から思う。

口下手で嘘が下手で言葉にしてくれることは少ないけれど、ちゃんと私をいちばんわかってくれている。



ね、聞いて。

もう! 聞いてる?

──聞いてるよ。

そう言って、今日も私のたわいないアレコレを貴方は煙草を吹かせながら黙って頷いている。


今度教えてあげるね。

日々の出来事をいちばんに伝えたい人って、いちばん大切な人なんだよって。

きっと貴方は煙草を吹かしながら、照れ隠しで、ふぅんって言うんだろうけどね。


2024.12.12