ーーー アルコールを体内に循環させた僕たちは、自転車を押して、夜道を歩く。

ようやく、心置きなく昔話に花を咲かせる事が出来る。

かなちゃんの表情からも、どこか、鉛を下ろしたかのような、晴れやかさを感じる。

自転車片道10程度でも、徒歩となると30分程度かかる道のりも、あっという間に過ぎる程、帰り道は、言葉だけで埋め尽くされていた。

そうして、僕は家の前に辿り着く。

「それじゃあ、かなちゃん。また明日ね」

「うん、遅くまでありがとうね。久しぶりに、すっごく楽しかったよ」

「そうだね! すごく。凄く楽しかった」

「じゃあ、お休み。壮くん」

「うん、お休み」

互いに最後に浮かべた表情は、きっと鏡写しのように、似たような笑顔だっただろう。

僕は、かなちゃんが、家に入る姿を見守ると、踵を返した。

すっかり都会の空に染まってしまっていたからだろうか? 今夜の星は特に綺麗に瞳に反射していた。

だからこそ、もう少しこの夜空を見上げていたかった。

もう少し。もう少しだけ。