ーーー こうして2人で並んで歩くのは、いつ以来だろうか?

最近はどう?とか、仕事は順調?とか、話題の映画を観に行ったとか、テーマパークの新しいエリアに今度行くんだとか、僕らの中に流れた会話は、会えなかった分を埋めるためのものではなく、あの頃と変わらない、他愛のないものだった。

「あ、このお店。もう無くなっちゃったんだね」

僕らの実家は、ごくごく近所という事もあり、幼少期からずっと一緒に遊んできたわけだが、こうして道を歩くだけで、どこも聖地のように、意味があるものだと再確認する。

今もそう。かなちゃんの指さした先にある、古びた小さな駄菓子屋。

当時から、おばあちゃんが1人で切り盛りをしていた事もあり、あれから時が過ぎた今は、その思い出の登場人物の1人も、会えない人となっている事は珍しくなかった。

「あのおばあちゃん、1年前に亡くなったみたいだね。なんだか、死というものを、身近に感じた気がしたよ。会えるうちに、会いたい人に、会っておくべきなんだなって」

思うがままに発した言葉は、僕らの関係を型どっているようで、改めて、今日の再会を喜ばしく思った。

「そうだね。私達も、大人になったって事なんだよね。そして、これからもどんどん年老いて、その頃の私達は、どうなっているんだろうね? 」

「どう………だろうね」

何も変わることない。そう思いたかった。言いたかった。でも、心に嘘をついても無意味だ。

あの頃から確かに変わっている日常も、あの頃と同じように歩いているようで、互いの異なった歩幅も、他愛のない話の内容も、全てが変わることのない未来を否定していた。

夏の透き通る空の下、炎天の中でも、爽やかな風が吹いている事によって、暑さも煩わしく感じないまま、僕たちは、見慣れた筈が、新鮮にも映る、実家まで辿り着いていた。

「よし! じゃあ、ここまでだね」

「かなちゃんは、明日戻るんだっけ? 」

「うん。結構、スケジュールがバタバタとしててね。本当はもっとゆっくりして行きたかったし、壮くんとも話していたかったんだけどね」

別れ際。かなちゃんのその言葉は、いとも簡単に僕の脳を支配した。

同時に胸を掴まれる思いで、それが焦燥となって、僕に言葉を生み出した。

「今日の夜! 会えない、かな? その、また、行こうよ。あの公園にさ」

その言葉がかなちゃんの鼓膜を揺らすや否、かなちゃんの顔に笑みが浮かぶ。

それだけで、その提案の返答には充分だった。