人は誰しも
この世に生を受けた意味があるのだという。
【私は慧に会うために産まれてきたの。
大袈裟じゃないよ。心から思ってる】
彼女からもらった最後の言葉。
この言葉と共に俺は生きていく。
そう…決めたんだ。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
「ねぇ。慧、私最近疲れやすいの。微熱もあるし」
みなみが俺に言う。
彼女は俺の妻。
大恋愛でもなく、ごく普通の社内結婚。
そしてみなみは仕事を辞め就職活動中。
「学生時代に戻ったみたいで楽しいよ」
と彼女は言うが、なかなかに苦戦しているようだ。
「疲れが出たのかもしれないな。最近就活も始めたし、その前は、結婚式とか新婚旅行に出かけたりしていたから」
「少し予定詰めすぎだったよな。せめて旅行はもっと落ち着いてから計画した方が良かったな。知らず知らずのうちに、負担がかかっていたんだろうな。ごめんな。南半球はこっちと季節も真逆だったし」
そう言うと、みなみは激しく首を横に振った。
「そんな事ないよ。すっごく楽しかったし。私、ニュージーランドで羊の大群見てみたかったの」
「願いがが…叶った」
「ちょっと止めろ。キスしてくんな」
「ありがとうのしるし」
新婚旅行の行き先にニュージーランドを強く推したのはみなみだ。
その理由が羊…
もう少しロマンチックな理由はなかったのだろうか?
例えば、綺麗な湖が見たいとか、教会で再び愛を誓うとか…
「それなら北海道でも良かったんじゃ…」
「分からないかなぁ。私は本場の羊が良かったの!」
「本場の羊…お前なに言ってんの?」
「実は自分でもよく分かんない…」
「そういえば、熱あるんだろ。後は俺がやっておくからもう寝た方がいいぞ」
「ありがとう。そうさせてもらうね」
「みなみお前…」
寝室に行こうとしている彼女の顔が、やけに青ざめているのが気になり思わず声をかけた。
「大丈夫。過保護だなぁ慧は。じゃあおやすみ」
しかしそれは、この後起こる出来事の、ほんの序盤でしかないことを、その時の俺は知る由もなかった。
この世に生を受けた意味があるのだという。
【私は慧に会うために産まれてきたの。
大袈裟じゃないよ。心から思ってる】
彼女からもらった最後の言葉。
この言葉と共に俺は生きていく。
そう…決めたんだ。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
「ねぇ。慧、私最近疲れやすいの。微熱もあるし」
みなみが俺に言う。
彼女は俺の妻。
大恋愛でもなく、ごく普通の社内結婚。
そしてみなみは仕事を辞め就職活動中。
「学生時代に戻ったみたいで楽しいよ」
と彼女は言うが、なかなかに苦戦しているようだ。
「疲れが出たのかもしれないな。最近就活も始めたし、その前は、結婚式とか新婚旅行に出かけたりしていたから」
「少し予定詰めすぎだったよな。せめて旅行はもっと落ち着いてから計画した方が良かったな。知らず知らずのうちに、負担がかかっていたんだろうな。ごめんな。南半球はこっちと季節も真逆だったし」
そう言うと、みなみは激しく首を横に振った。
「そんな事ないよ。すっごく楽しかったし。私、ニュージーランドで羊の大群見てみたかったの」
「願いがが…叶った」
「ちょっと止めろ。キスしてくんな」
「ありがとうのしるし」
新婚旅行の行き先にニュージーランドを強く推したのはみなみだ。
その理由が羊…
もう少しロマンチックな理由はなかったのだろうか?
例えば、綺麗な湖が見たいとか、教会で再び愛を誓うとか…
「それなら北海道でも良かったんじゃ…」
「分からないかなぁ。私は本場の羊が良かったの!」
「本場の羊…お前なに言ってんの?」
「実は自分でもよく分かんない…」
「そういえば、熱あるんだろ。後は俺がやっておくからもう寝た方がいいぞ」
「ありがとう。そうさせてもらうね」
「みなみお前…」
寝室に行こうとしている彼女の顔が、やけに青ざめているのが気になり思わず声をかけた。
「大丈夫。過保護だなぁ慧は。じゃあおやすみ」
しかしそれは、この後起こる出来事の、ほんの序盤でしかないことを、その時の俺は知る由もなかった。