その日の午後、全校集会があった。
 元同級生と同じ体育館で話を聞く。前の全校集会では、顔を少し下げて、視線を下に向けて、どうか誰にも見られませんようにとただただ願って終わった。
 昼休みにあんな話をしたからだろうか。
 整列した後に少しだけ顔を上げてしまった。無意識に元同級生の列を視線で追ってしまう。
 見慣れた顔が当たり前だけど全員で、見慣れた雰囲気のままだった。

 本当だったら、あの列に「私」もいたはずだった。

 私の本当の居場所は、今並んでいる列じゃない……なんて、哀れな感情が顔を出す。その時、去年同じクラスだった友達と目が合った。私が交通事故にあってからも、留年してからも、連絡をくれ続けた友達。

 友達は私と目が合うと、当たり前のように笑顔で手を振ってくれる。そして、私が手を振り返すと、さらに笑顔になってくれる。

 涙が溢れそうで、下を向いて唇を噛む。

 浅沼くんは、私を優しいと褒めてくれた。

 違うよ、本当はそんな資格ないの。


 本当は、どれだけかなんて表現出来ないほど世界を恨んだ。


 何故、私がこんな目に遭わなければいけないんだと、他の人だったら良かったのに、と思わないなんて無理だった。

 それでも、やっと分かったことがある。



 ねぇ、私、よく聞いて。



 どうか覚えておいて。



 そして、絶対に忘れないで。





「貴方は何も悪くない」





 涙で滲んだ視界はぎゅっと目を瞑って、涙を落としてしまおう。
 そして、見えた世界はきっと前とそんなに変わらないでしょう?
 今のクラスで整列したら、初めて見た人はきっと誰も私が「特殊」だなんて気付けない。

 大きく変わった二度目の高校二年生。

 それでも、今見えている景色は周りの高校生が見ている景色と同じなんだ。

 ねぇ、だから私だって「笑顔」で過ごしてもいいはずでしょう?

 全校集会が終わって、ホームルームが終わった後、私は先ほどの友達に連絡を送った。

「久しぶりに会えて嬉しかった!」

 すぐに既読がついて、帰って来たのはたったの二文字。


「私も」


 私を幸せにしてくれる言葉は、すぐそばに転がっていた。