――僕はよく、水のなかにいる夢を見る。
 暗いくらい水の底。
 水底からは、光がカーテンのように揺らめく水面が見えている。
 水面の先、光の向こうにあるのは、いわゆる青い春。
 友だちとわいわい騒いだり、恋に落ちたり破れたり。
 眩しい。羨ましい。
 水面は、線だ。
 僕と君を隔てる線。
 僕もそっちに行きたくて手を伸ばしてみる。
 けれど、どんなに泳いでも身体は沈んでいくばかりで。
 僕の声は、だれにも、どこにも届かない。
 そう思ってた。
 君が、その線を越えてくるまでは。